The Nameless City: TOMIXとMärklinに見るブランディングの違い

2020年1月4日土曜日

TOMIXとMärklinに見るブランディングの違い

企業のブランディングでもっとも成功してるのはどこだろう?
大きな企業でもCIだけで何やってるか分からない企業はたくさんある。

やはりアップルを筆頭にGAFAじゃないだろうか?
GAFA=Google・Amazon・Facebook・Apple

名前を聞くだけでその企業が何をやっているのか連想できる。
広告を見ただけでロゴなど見なくてもどの企業なのかだいたい分かる。
ブランディングに成功すると消費者はこういう状態になる。

消費者へ企業イメージを刷り込ませるのは並大抵の事ではない。
まして鉄道模型なんて趣味としてもマイナーだし、ブランディングを行う人材も体力もないかもしれない。

しかし欧州シェア1位のMärklinは昔から、あるスローガンを上げてブランディングをしている。
GAFAのようには浸透していないけど少なくともドイツ人には刷り込まれてるはず。

Märklin

Märklin verbindet Generationen
Märklinは去年160周年を迎え改めてスローガンを前面に出してきた。
直訳すれば「メルクリンは世代を繋ぐ」

Märklinは160周年と言う事からも分かる通りとても古い、Theodor Friedrich Wilhelm Märklinが
ブリキのおもちゃメーカーとして立ち上げたのが1859年。
鉄道模型をはじめたのも古く1891年に1番~5番ゲージの模型をライプツィヒのトイフェアに出展してる。
1895年には0ゲージ、そして1935年にはH0ゲージとどんどん小さくなり一般家庭向け化してる。
アナログ自動運転、デジタル化へのスムーズな移行など先進的でうまく行っていたけど
2009年に一度経営破綻している。しかし翌年にはうまく復活した。

いくつか160周年プロモーションビデオが作られているけど、その中でも2018年10月にアップされた
感動するプロモーションビデオ、Gleis1が最もスローガンを表現してる。


雪の降るひと気のない駅で雪かき、分岐器のメンテナンスや駅の清掃をもくもくとする老駅員。
写真たてやペンダントに入れた孫の写真を見ては「今日も来なかった」とまた次の日も、また次の日も
同じ事を繰り返す。

しかし、ある夜寝ていると振動と轟音とともに列車が駅に到着する。
うれしそうに飛び出し、いよいよだなと蒸気機関車へ乗り込む老駅員。
帽子を軽く上げ挨拶する先にいるのは、その蒸気機関車を操作する孫。
屋根裏部屋に作られたレイアウトはおじいさんが作ったもので孫の鉄道模型デビューを待っていた。

こちらは有名なバーデン・ヴュルテンベルク州立フィルムアカデミーの生徒が制作。
演出、音楽、カメラワーク、ライティング、ストーリーすべてが素晴らしい。

バジェットも大きいだろうし尺も長いので自由度は高い。
スローガンである「メルクリンは世代を繋ぐ」がとても良く表現されている。
そしてこれはプロモーションビデオだけではなく実際にGleis1セットとしてスターターセットが発売された。

https://www.maerklin.de/de/produkte/details/article/29013/

もちろんこれだけではなくMärklinは他にも素晴らしいプロモーションビデオを作ってる。
家族のパーティをこっそり抜け出す老人と子供。
Gleis1プロモーションと似てるけど今度は孫達と一緒に世代を超えて遊ぶ姿。


こちらは160周年のプロモーションビデオで、孫とだけでなく幅広い層をターゲットにしてるのが分かる。


Märklinはプラレールのように安全なおもちゃも作っている。


このブログでも何度か書いているけどMärklin MyWorldシリーズの凄さはH0である事。
レールはプラスチック製で車体の露出する部分にも電気は流れていない。
電池で動くけどプラレールのように遠隔操作やサウンド、スモークもある。
建物や情景などもあってプラレール的。

もう少し大きい子用にレールにも通電しているレゴのようにブロックでも遊べるセットがある。


これもH0でこのレールは普通に通電しているのでそのまま大人になっても使える。
MyWorldもこのブロックセットも年齢制限は3歳以上。
この世代からブランディングの刷り込みが始まってると言っても過言ではない。

TOMIX

世界の鉄道模型では小さい市場だしNゲージだしでMärklinの後に紹介するのは酷だけど
TOMIXが去年11月にYoutubeへアップしたビデオ。


15秒のスポットCM用が3本まとまった物だけど、Märklinと比べてどうだろうか?
15秒では言いたい事は言えない、とりあえず思いつく言葉いれてやろうって感じだろうか?
1つ目2つ目のノスタルジアがキーワードならまだ分かるけど、3つ目になると全然違う。
安いよ!簡単だよ!がキーワードに。

同じスターターセットのプロモーションでもMärklinとは全然表現したい内容が違う。
いかにして見る者に訴えかけるものを作るか、とても難しいけど15秒スポットを対象にしないで
現在19万再生もされてるのだからMärklin Glesi1(現在23万再生)のように長尺でしっかり
心に訴えかけるものを作った方がブランディングとしては効果的ではないだろうか?
3つ目の安いよ!簡単だよ!が一番の売りならその必要はないかもしれないけど。
それなら畑は違うけどユニクロの方がブランディングに成功してる。

ブランディングは小さな所からこつこつ築き上げなければ大きくならない。
欧州で鉄道模型はどちらかと言うと大人の趣味で運転会などでは家族総出で楽しんでる姿が見れる。
私が鉄道模型趣味に目覚めた5年前、友人に「なんで?鉄道好きだったっけ?」って言われた。
たぶん悪気のない偏見なんだと思う。
確かに鉄道なんて興味なかったしプラモデル含めて模型は小学生の頃たしなんだ程度。

でも「なんで?」はMärklinのある欧州ではなさそうに思える。
それは鉄道に詳しくなくても1つの趣味としてとても楽しそうに映るから。
「あぁ鉄道模型ね!楽しそうだよね!」と友人もドイツなら言ってくれたかもしれない。
そしてまず大人が楽しそうに遊んでいるので子供たちも鉄道模型が楽しいものだと分かってくれる。

大人が、ゲージだの、デジタルだの、アナログだの、プラだの、鉄だの、と議論に
花咲かしていて子供たちや友人や家族が楽しそうだと思ってくれるだろうか?
メーカーもそうだけどユーザーも変わらなければ鉄道模型への偏見もなくならないだろうし
楽しさが広がる事もない気がする。

とは言えTOMIXはこうしたプロモーションをしているだけ素晴らしい。
KATOは残念ながらYoutubeにアップしているビデオにブランディングのプロモーションはなかった。
今の時代スマホの普及でテレビよりYoutubeを見る機会の方が多いと思うので15秒スポットなんて
古臭いものに囚われずに柔軟に考えて欲しいもの。



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